生き物紹介-ヒサマツミドリシジミ

こんにちは。

ハルです!

今回はクワガタ以外の昆虫になりますが元・幻のチョウであるヒサマツミドリシジミを紹介します。

このチョウは実は夏に眠るという面白い特徴を持っています。

前回の記事で紹介したムネアカオオアリの冬眠と関連して今回も眠る昆虫を紹介するのでなぜわざわざ夏に眠るのか?なぜ”元”幻のチョウなのか?知りたければ続きを読んでみてください。

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目次

ヒサマツミドリシジミとは?

和名:ヒサマツミドリシジミ

学名:Chrysozephyrus hisamatsusanus

分類:チョウ目シジミチョウ科

分布:北陸、東海、近畿、中国、四国、九州南部に局地的に分布(日本固有種)

体長:正確な体長は分からなかったのですが他のシジミチョウと同じくらいの大きさです

出現期:6月中旬〜7月上旬

♀は夏眠後、9月中旬〜11月上旬ごろ再び産卵のために活動

生息場所:山地の照葉樹林

食性:

成虫:花の蜜(クリ、アザミ、アカメガシワなど)

幼虫:ウラジロガシ、イチイガシ

♂は羽が綺麗なミドリ色で♀は黒色で表に青と赤の斑点があります。

最初に発見された鳥取城跡近くの久松山に由来している。

ヒサマツ山で見つかったからヒサマツミドリシジミかと思ったら山の名前はヒサマツ山ではなくキュウショウ山

1933年に地元の高校生が偶然発見した。その時は幻のチョウと呼ばれていたがそれ以降生体が徐々に解明され、各地で産地が発見されたので今では元・幻のチョウです。

♀のために自分の命を削る!自分の命を削った捨て身のプレゼント

♂は羽化してすぐに山頂や尾根の低木や高木、草の上で♀を探すために縄張りの見張りを始めます

縄張りを他個体が通ると♂はそれを追いかけて弧を描きながら高速で追いかけて相手が♀か確認します。(卍巴飛翔)

目の前を通る他個体が全て同種の♀に見えてしまうので♂が通りすぎた時も確認しにいきます。

♀は♂と交尾する時にナプシャルギフトと呼ばれる栄養分を受け取ります

主要成分はNaなどの無機物やタンパク質、アミノ酸などです。

この栄養分は休眠明けの卵の生成、吸水、食草探索、産卵部位の判断、産卵のために使われます。

このナプシャルギフトのおかげで♀は休眠明けも長く活動することができます。

ここからが重要でこのナプシャルギフトを♀にあげる時に♂はかなりの体力を消耗してしまうのでナプシャルギフトを渡し終わった♂は★になってしまいます

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♂が自分の命を削ってまで♀のためにプレゼントをあげるのは可哀想だけど勇敢でステキな行動だと思いませんか?

我が子のために休眠して時期を調節!夏に眠る理由

6月下旬〜7月下旬に交尾を済ませた♀は約1ヶ月間休眠状態になります

この1ヶ月間は極力代謝を抑えて不活発になり卵巣の発達を停止させているのですが問題はそこではなく何のために1ヶ月休眠するの?というところが気になると思うので説明していきます。

ヒサマツミドリシジミは植物の休眠芽の根元に卵を産みます

でも休眠芽は夏の間に成長して膨らむので交尾後すぐに卵を産み付けてしまうと卵が休眠芽に押し潰されてしまうのでそれを防ぐために休眠芽の成長が終わるまで1ヶ月間時期を合わせるために休眠しています。

この休眠中は気温が低い湿潤な林の中で休んでいて必要最低限の水分を摂取する時だけ地面に降りることがあります。

ちなみに休眠に入るための条件は夏の長日日長です。

9月上旬〜下旬の秋の短日日長によって休眠から目覚めて卵を産み始めます

山頂や尾根筋付近で休眠していた個体は食草のあるところまで降りてきます。

そして1匹の♀が200個を超える量の卵を産むのですが、小さい体で200個の卵を一気に産むことはできないので卵を作って産卵して10日ほど休んでもう一回産卵してみたいな形で合計200個の卵を産みます。

この間にも未熟卵の成熟や活動するためのエネルギー、生きるために河原や湿った地面で吸水します。

卵のサイズは約1㎜です。

♀が休眠してまで休眠芽の根元に卵を産んだわけ

産卵されてから2週間以内に幼虫の体自体は出来上がっているのですが卵の中で越冬します。

卵の中の幼虫は約2ヶ月の低温期間を経て2月ごろに覚醒しますが、4月上旬〜中旬に孵化するまでの間卵の中で待機してます。

そして孵化すると休眠芽の根元に親が卵を産んでくれているので卵から出てきてすぐに美味しい新芽を食べることができます

卵の中で幼虫が冬を越すパターンはムモンアカシジミを除いて全ての日本産ゼフィルスに共通しています。

ゼフィルスとはミドリシジミの仲間の総称で日本に25種類います。

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最後に

今回はヒサマツミドリシジミを紹介しました。

♀のために自分を犠牲にする♂や幼虫のために植物の芽の根元に卵を産む♀のどちらも凄いしよく考えていると思いました。

緑色の綺麗なチョウを見つけたら静かに応援してあげてください。

参考文献

・日本チョウ類保全協会 2012 フィールドガイド日本のチョウ 誠文堂新光社

・長谷川大 2020 日本のゼフィルス むし社

・伊藤隆夫 2020 最新日本列島の蝶類図鑑 北隆館

・福田晴夫・浜栄一・葛谷健・高橋昭・高橋真弓・田中蕃・田中洋・若林守男・渡辺康之 1984 原色日本蝶類生体図鑑(Ⅲ) 保育社

・工藤誠也・矢後勝也 2018 美しい日本の蝶図鑑 ナツメ社

・田中蕃 1980 森の蝶 ゼフィルス 築地書館

・竹内剛 2021 武器を持たないチョウの戦い方京都大学学術出版会

・ヒサマツ・フリークの会 2015 ヒサマツミドリシジミの謎を追って(1)〜♀の秋季産卵と吸水〜 月刊むし むし社

・ヒサマツ・フリークの会 2016 ヒサマツミドリシジミの謎を追って(2)〜♀の夏季休眠と秋季吸水の意味合い〜 月刊むし むし社

・ヒサマツ・フリークの会 2017 ヒサマツミドリシジミの謎を追って(3)幼生期の生態〜孵化から羽化まで〜 月刊むし むし社

・ヒサマツ・フリークの会 2018 ヒサマツミドリシジミの謎を追って(4)成虫期の生態〜羽化からヒルトップまで〜 月刊むし むし社

・有田斉・前田善広 2012 日本海新聞の当時の記事(1996) 珠玉の標本箱日本産蝶類標本及びデータベース(1)シジミチョウ科1 NRC出版

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