生き物紹介‐ジャコウアゲハ

こんにちは。

ハルです!

ジャコウアゲハは一度見かけると黒い大きなチョウということで記憶に残りやすい可愛らしいチョウだと思います。

この可愛らしい黒色のチョウ、実は毒を持っています!

今回はそんな毒も持つ黒色のジャコウアゲハという昆虫を紹介しようと思います。

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目次

ジャコウアゲハとは?

和名:ジャコウアゲハ

学名:Atrophaneura alcinous

分類:チョウ目 アゲハチョウ科アゲハチョウ亜科キシタアゲハ族(ジャコウアゲハ族)

分布:本州、四国、九州、南西諸島

体長:75〜100mm

出現期:4月〜9月 多化性で成虫は一年に数回発生し、蛹で越冬する。その発生回数は一般に北日本では2回、南日本では3〜4回とされている。

生息場所:山地や平地などにある森林、農地、河川堤防、草原など。人里と接するエリア(林縁部で蜜源植物が多く生育しているため)

食性(幼虫):ウマノスズクサ科の多年生のつる植物(ウマノスズクサ、オオバウマノスズクサ、リュウキュウウマノスズクサなど)

食性(成虫):花の蜜

ジャコウって?ジャコウアゲハの名前の由来

名前の由来を紹介する前にジャコウアゲハは別名を持っているのでそちらを先に紹介します。

暖かい地域に住み、日中に低い場所をゆっくりと優雅に飛ぶその姿からかつては「山女郎」と呼ばれていたそうです。

ではいよいよジャコウアゲハの名前の由来です。

オスの成虫が腹部の端の穴から麝香(ジャコウ)のような匂いを発生させるためジャコウアゲハと呼ばれています。

ジャコウのような匂いと言われても…と思う方もいると思います。

ジャコウとはジャコウジカの腹部にある高囊から得られる分泌物を乾燥した香水の材料です。

ジャコウアゲハの幼虫はどんな姿?幼虫の生態

斜めの白帯を持ち全体的に突起を持っていてイボ状突起の先端は赤みがかっています。

体色は齢期や季節によって異なり、1-2齢では暗褐色であまり変異はありません。しかし、3齢以降になると個体変異が顕著になり、黒色~暗褐色〜赤褐色まで様々な変異がみられる。

特に盛夏になると赤褐色の幼虫がみられ、その他の季節では黒色〜黒褐色であることが多い。

体色が変化する理由

環境要因として光や温度、密度、餌の質などが考えられるが、原因ははっきりとは分かっていません

体色変化は環境が変わると徐々に変化するのではなく、その後の脱皮を境として起こる

ジャコウアゲハの蛹について

蛹の色は褐色(越冬)、黄色(非休眠)で、帯糸の色は、黒と白です。

越冬蛹で帯糸が黒のものをよく見ます。(探したエリアではそういう個体が多いだけかもしれませんが)

帯糸の色について、参考にした研究では、遺伝によるものではないかと推測していたが、はっきりとしていません。

この研究では、同じだけ光を当てた環境、白いティッシュの上、シャーレの蓋、それぞれの場所で蛹化した際、色の偏りは発生していないため、環境が要因ではないと結論付けています。

形状が、「皿屋敷」に登場するお菊が後ろ手を縛られている姿に似ていることから「お菊虫」と呼ばれています。

ジャコウアゲハの成虫の生態は?もう少し詳しく紹介!

ツツジやアザミ類などの赤い花を好んで蜜を吸います。

ウマノスズクサ科植物の裏に2mmほどのオレンジ色の卵を産みます。

翅の後部に細長い突起が見られ、翅の形などがオナガアゲハに似ているが腹部に赤色の帯状に連なった斑紋がある事などが異なっています。

「雌雄異型」

・オスの翅は全体的に暗い灰色、メスはより翅色が明るく、薄い灰色くらいの色をしており、翅の外側は黒色の帯で縁どられています

・季節変異アリ 春:雌雄ともに小型(時に大型の個体もいる)、黒化

        夏:大型化、メスは明色化

        メスの翅の色に関しては南の地域に住む個体ほど濃くなる傾向がある

・翅形

メスの方が翅の後部にある細長い突起が長く、翅の内側が少し膨らんでいますがオスが発する麝香のような匂いはメスを引き寄せるという役目をもっているようです

この匂いの成分はフェニルアセトアルデヒドである。

ジャコウアゲハの身の守り方

ジャコウアゲハには身を守る方法がなんと4つもあります。ここではその4つを順番に紹介します。記事の冒頭で毒を持っているとネタバレしてしまっていますが…

では早速見ていきましょう。

擬態

ジャコウアゲハの幼虫は鳥の糞に擬態しています。それによって、鳥からの捕食を防いでいます。鳥も流石に自分の糞に擬態されると手を出さないですよね。

ほかのアゲハチョウ科の蝶は、脱皮をするにつれて緑化しますがジャコウは変化しません。これは体内に毒を含んでいるため捕食圧の心配がないためと思われます。

しかし、毒を含んでいても寄生されないわけではありません。越冬蛹を探していた時、寄生昆虫の羽化したと思われる穴の開いた蛹を発見しました。

臭角

アゲハチョウ科の幼虫は、物理的な刺激を受けると頭の先端から、オレンジ色っぽい臭角を出し外敵を威嚇します。この角は、独特のにおいを放ちます。

アリに対して行われた実験では、ジャコウアゲハの臭角に含まれるセスキテルペンは、防御効果が弱いという結果が出ている。(スズランの匂い)

その他アゲハチョウ科では、アシナガバチの仲間に対して有効です。例えばセグロアシナガバチが放出された液体を浴びると一時混乱状態になり、捕獲をあきらめます。

毒を蓄える

ウマノスズクサが作るアリストロキア酸を体内に蓄積し、鳥などの外敵に食べられるのを防いでいるといわれています。(発癌性物質)

人がその毒を食べると胃炎になるほど強力です。現在は生薬として陣痛促進剤として用いられています。

♂よりも♀のほうが多く蓄えています。

卵のコーティング

産卵と同時に鮮やかな橙色の粘稠物を特殊化した付属腺からクリームのように絞り出し、卵を包みます。この粘稠物は次第に固化するが、アリストロキア酸が高濃度に含まれています。

この物質は、卵黄部にも含まれますが、もし外壁に忌避物質があればより効果的に卵内部を守ることが期待されています。

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最後に

今回はジャコウアゲハについて紹介しました。クワガタ以外の生き物にはなってしまいましたがいかがでしょうか。時々見る黒色の大きなチョウはかなりいろいろな方法で身を守っていて面白かったと思います。

クワガタの記事の方や他の生き物紹介も是非ご覧下さい。

参考文献


・槐真史編,伊丹市昆虫館監修「ポケット図鑑日本の昆虫1400 ①チョウ・バッタ・セミ」

 文一総合出版,2013

・伊藤隆夫,最新日本列島の蝶類図鑑,北隆館,2020

・木庭宏,蝶の生態(観察、撮影、そして思索),松籟社,2012

・福田晴夫・高橋真弓,蝶の生態と観察,築地書館,1998

・福山光夫・著,若林守男・増訂,原色日本蝶類図鑑増補改訂版,保育社,1975

・福田晴夫,浜栄一,葛谷健,高橋昭,高橋真弓,田中蕃,田中洋,若林守男,渡辺康之

 原色日本蝶類生態図鑑(1),保育社,1994

・本田計一,アゲハチョウ類の化学生態学,1990

・阿江茂,ジャコウアゲハ休眠蛹の起眠について,1984

・宇佐美賢祐,ジャコウアゲハの幼虫における体色決定の要因,「YADORIGA やどりが230号」,2011

・佐藤文彦・浜竜哉・西田昇平・松井俊樹,植物は何故薬をつくるのだろう?,2017

・北原正彦,チョウ類を通してみた山梨の生物多様性の現状と課題,「関東東山病害虫研究会報 第63集」,2016

・正山征洋,薬害をひきおこした薬草,「長崎国際大学論叢 第17巻」,2017

・加藤義臣,ジャコウアゲハ(原名亜種)の蛹休眠終了に対する低温と日長の効果,「やどりが 171号」,p50,1997

・姫路科学館,「化学の眼No.522 ジャコウアゲハ」,2017

・西田律夫,昆虫と植物二次代謝成分 その特異な化学生態学,「化学と生物vol.27,No.4」,p228,1989

・厚生労働省医薬食品局,医薬品・医療用具等安全性情報 Pharmaceuticals and Medical Devices Safety Information No.200,2004

・菅野里子,ジャコウアゲハチョウの吐糸色(黒と白)の考察,2000

国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所,自然探訪2012年5月 ジャコウアゲハ,2012

・ジャコウアゲハ | 昆虫図鑑

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